INNER BRANDING
インナーブランディング
インナーブランディングは、企業の理念や意志、ブランドの価値やビジョンを従業員に浸透させる啓蒙活動です。顧客向けのブランディングが「アウターブランディング」であるのに対し、社員向けのブランディングであることから「インナーブランディング」と呼ばれます。自社や自社のブランドに対して愛着を持てることで、仕事のモチベーション向上をはじめ、業務効率化や品質改善、顧客満足度の改善、離職率低減といった効果が期待されます。
インナーブランディングで成功している有名な事例の一つがスターバックスです。彼らは、人材教育に時間とコストをかけ、体系的に接客のクオリティを上げていますが、その根底にあるのは、従業員自身も「スターバックスのファンの一人」であることです。顧客満足度(CS)よりも従業員満足度(ES)を重視しているのは、従業員が満足して働けなければ、お客さまの満足度は向上しない、という考えがあるからです。費用対効果の面から、顧客に向けたアウターブランディングばかりに注目しがちですが、実はインナーブランディングを強化することが、顧客満足度の向上につながるのです。
「わざわざ費用をかけてまでやる必要はない」と、インナーブランディングを行わなかった場合、どのようなリスクが想定されるでしょうか。まずは、「企業や経営陣に対する誤解や不満」が増加します。企業理念やビジョン・ミッションが共有されていないことで、業務量が増えた際に、「給料が上がらないのに仕事ばっかり増えている」という不満因子(離職の火種)が生まれます。その火種が燻り続け、毎年一定の割合で退職者が出るようになります。実は勤続年数の長い従業員より、勤続2〜3年ほどの従業員のほうが会社への見切りが早く、「いつまで経っても若手が育たない」というスパイラルに陥ってしまうのです。さらに若手が辞めていく会社は、「うちは魅力がないから若手が辞めるんだ」というネガティブな空気が管理職にも広がり、仕事や会社に対して誇りを持てない従業員が増え、士気の低下、売り上げ減少、品質低下、事故やクレームの増加といったリスクが高まります。
インナーブランディングの具体的な方法としては、トップ、管理職、現場というように階層別にヒアリングを実施します。それぞれの役割や立場における課題抽出、階層による意識のギャップなどを確認し、その上で必要なツールを検討していきます。たとえば、中途採用が多い会社は企業理念の共有が不十分なことも多いので、改めて会社の歴史から紐解き、志を再確認するブランドブックを制作。また、全国に支社・グループ会社が点在している会社であれば、社員一人ひとりをクローズアップしたブランドムービーを制作します。現状の課題と今後の狙いにあわせてツールを制作しますが、数カ月から数年単位で捉え、継続的に推進していくことが必要です。